こんにちは。看護師の荒木まりです。
今日は、私が糖尿病看護に携わる中で、ずっと大切にしたいと思っているテーマについて書かせてください。
糖尿病看護の中で感じてきた、言葉への違和感
「なんで糖尿病看護を選んだの?」
「糖尿病の患者さんって、大変じゃない?」
「言うことを聞いてくれない人とか、自業自得な人も多くない?」
これまで、こんなふうに聞かれることが何度もありました。そのたびに、なんとも言えない、モヤっとした気持ちになっていました。
糖尿病になったことを、その人のせいだと決めつけてほしくない。
「言うことを聞かない」という言葉で、簡単に片付けていい話ではない。
そう思いながらも、うまく言葉にできずにいました。
でも、「糖尿病スティグマ」という言葉を知って、あの時のモヤモヤの正体が、少しはっきりした気がしています。
糖尿病スティグマとは
スティグマとは、病気や特徴に対して、否定的な見方や決めつけが向けられることです。糖尿病では、誤った理解による偏見や差別につながることがあります。
「自己管理ができていないせいだ」
「食べ過ぎで、不摂生だったのでは」
そんなふうに、糖尿病になったことを、本人の性格や努力不足のせいにされてしまうことがあります。
けれど、糖尿病にはさまざまな種類があり、生活習慣だけでなく、遺伝的な要因や自己免疫なども関わっています。病気になったことだけで、その人の暮らしや努力を判断することはできません。
病気への偏見が、仕事や人間関係の中での不利益や、病気を伝えにくい気持ちにつながることもあります。
糖尿病と診断されても、その人が大切にしてきた暮らしや、役割、人としての価値は変わりません。病名だけで距離を置かれてしまうことを思うと、胸が苦しくなります。
医療者も、無意識に傷つけてしまうことがある
このスティグマは、社会からだけでなく、私たち医療者の言葉や態度から生まれてしまうこともあります。
「食べ過ぎだから、食事を制限してください」
「運動してください」
食事や運動について伝えることは、治療の中で大切です。ただ、その人の生活や難しさを聞かずに、一方的な指示になっていないか。私自身も、気をつけたいと思っています。
医療者の中には、知らず知らずのうちに「こうあってほしい」という、理想の患者さん像を思い描いてしまうことがあります。
そして、目の前の方をその理想像に当てはめようとして、「なぜできないの」「なぜやめられないの」と、責めるような言葉をかけてしまう。
その言葉によって、「自分はダメな人間なんだ」と感じてしまう方もおられます。
また責められるのが怖くて、困っていることを言えなくなる。実際には難しくても、「やります」と答えてしまう。そんなことが起こるかもしれません。
だからこそ、うまくいっていることも、難しいことも、安心して話せる関係を大切にしたいです。

血糖値や、できた・できなかったという結果だけでは、その人の頑張りはわかりません。まずは、どんな毎日を過ごしているのか、お話を聞くことから始めたいと思っています。
「生活習慣」は、本人の意志だけでは決まらない
糖尿病の発症や、血糖コントロールがうまくいくかどうかは、本人の意志の強さだけで決まるものではありません。
どんな仕事をしているか。食事をとれる時間はいつか。収入や食べ物を選べる環境はどうか。子育てや介護など、日々どんな役割を担っているか。
こうした生活の背景には、本人の力だけでは変えにくいこともあります。
「生活習慣を変えてください」と一言で伝えても、実行することが難しい環境にいる方もおられます。
その背景を理解せずに、「怠けている」「意志が弱い」と捉えてしまうことも、偏見につながってしまいます。
私は、何が難しいのか、どんな支えがあれば取り組めそうかを、一緒に考えられる存在でいたいです。
関わりの中で、私が大切にしたいこと
だからこそ、普段の関わりの中で、次のことを大切にしたいと思っています。
禁止や命令だけで終わらせない
「間食してはいけません」と伝える前に、どんな時に食べたくなるのかを伺う。楽しみも大切にしながら、治療内容や生活に合う方法を一緒に考えたいです。
一方的に目標を決めない
「これをしましょう」と決めるのではなく、「どんなことならできそうですか?」と、本人の思いを伺いながら考えたいです。
うまくいかない時こそ、まず話を聞く
できなかった理由を責めるのではなく、その背景にある事情や気持ちを知りたいです。
治療のためだけに生きているわけではないことを忘れない
仕事、家族との時間、楽しみ、これからやってみたいこと。その人の人生で大切なものを、治療と一緒に考えたいです。
診察室では患者さんでも、その外には、一人ひとりの暮らしがあります。
その人の人生の目標や、大切にしたいことを、私たち医療者が置き去りにしてはいけないと思っています。
糖尿病とともに、自分らしい人生を
糖尿病になったことは、責められることではありません。そして、治療がうまくいかない時期があることも、人としての価値とは関係ありません。
糖尿病とともに生きるすべての方が、自分らしい人生を送れるように。そのための後押しができる存在でいたいと、改めて思っています。

困っていることや、うまく言葉にできない気持ちも、そのまま話せる場所でありたいです。生活や大切にしたいことを伺いながら、無理なく続けられる方法を一緒に考えていきます。
「どこに相談したらよいかわからない」
そんな時には、気軽にお声がけくださいね。
お話を伺いながら、少しでもお力になれたら嬉しいです。
荒木 まり
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食事や生活習慣についての疑問、治療を続ける中で感じる不安など、看護師にご相談いただけます。
「何から始めたらよいかわからない」
「頑張っているけれど、なかなかうまくいかない」
「診察では聞けなかったことがある」
そんなお気持ちは、まとまっていなくても大丈夫です。今の気持ちや生活の様子を伺いながら、無理なく取り組めることを一緒に考えます。
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参考:糖尿病情報センター「糖尿病とは」(糖尿病の原因・正しい理解について)


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