こんにちは。看護師の荒木まりです。
「今日は食事に気をつけたはずなのに、なんで血糖値が高いんだろう…」
血糖値の数字を見て、うれしくなったり、モヤモヤしたり。そんな日もあると思います。
私自身、糖尿病専門クリニックで長年患者さんと関わる中で、「食事の内容は同じはずなのに、日によって数値が違うんです」というご相談を、たくさんいただいてきました。
実は、血糖値は食事の内容だけでなく、生活のいろいろな場面に影響されて、上下しています。
今日は、血糖値が上がる代表的な理由を、私なりにまとめてみようと思います。
① 糖質を摂ったとき
ご飯やパン、麺類などに含まれる糖質は、体の中で分解されてブドウ糖になり、血液の中に入っていきます。これが、食後に血糖値が上がる基本的な仕組みです。
でも、糖質は決して「悪者」ではありません。体を動かすための大切なエネルギー源です。
主食を抜くことを目指すのではなく、体の状態や治療内容に合う量、食事のバランスを考えていくことが大切です。
② 早食い・まとめ食い
忙しい日が続くと、食事を急いで済ませたり、食べられなかった分を次の食事でまとめて食べたりすることもありますよね。
一度に食べる糖質の量が多くなると、食後の血糖値が上がりやすくなります。早食いは、満腹感に気づく前に食べ過ぎてしまうことにもつながります。
まずは、ひと口ずつよく噛む、食事の途中で箸を置いてみるなど、取り入れやすいことから。
ただし、「ゆっくり食べれば必ず血糖値が下がる」というわけではありません。食べる量や内容も、一緒に振り返ってみるとよいと思います。
③ 食べる順番
ご飯やパンなどを先に食べる場合と比べて、野菜やおかずを先に食べることで、食後の血糖値の上昇が穏やかになることがあります。
「野菜やおかずから食べて、主食はあとにする」という方法も、工夫のひとつです。
ただ、効果には個人差があり、順番だけですべてが決まるわけではありません。主食・主菜・副菜をそろえ、食事全体の量やバランスも大切にしたいですね。

食べ方の工夫は、全部を一度に変えなくても大丈夫です。生活の中で無理なく続けられることを、一緒に探していきたいと思っています。
④ インスリンの分泌不足・効きにくさ
血糖値を下げる働きをしているのが、膵臓から出る「インスリン」というホルモンです。
・インスリンの分泌量が少ない
・インスリンは出ていても、効きにくくなっている
このどちらか、あるいは両方があると、血液中のブドウ糖をうまく利用できず、血糖値が高くなります。
インスリンが効きにくい状態を「インスリン抵抗性」といいます。肥満や運動不足などが関わることもありますが、体質や病気の状態など、一人ひとり背景は異なります。
食事に気をつけていても、薬の調整などが必要な場合があります。うまくいかないことを、努力不足だけで捉えないでほしいと思っています。
⑤ 体を動かす機会が少ないとき
筋肉は、血液中のブドウ糖を取り込んで使う、大切な場所です。体を動かす機会が減ると、血糖値が下がりにくくなることがあります。
食後に少し歩く、家事の中で体を動かすなど、日常生活の中の動きも、血糖コントロールに役立ちます。
運動の種類や強さによっては、一時的に血糖値が上がることもあります。治療内容や合併症によって注意点が異なるため、主治医と相談しながら、無理のない活動を選ぶことが大切です。
⑥ 睡眠不足・ストレス
「最近、よく眠れていない」
「仕事や家のことで、気が張っている」
そんな時は、食事の内容が同じでも、血糖値が上がりやすくなることがあります。
睡眠不足はインスリンの働きを弱めることがあり、ストレスも、血糖値を上げるホルモンの働きなどを通して影響します。
血糖値が高かった日に、食事だけでなく、眠りや心の疲れにも目を向けてみる。それも、体の変化を知る手がかりになると思います。
⑦ 体調不良のとき(シックデイ)
発熱や下痢、嘔吐がある時、食欲がなくて食事をとれない時などを、糖尿病では「シックデイ」と呼びます。
感染症などによる体のストレス反応で、食事量が減っていても、血糖値が高くなることがあります。一方で、食事量や薬の影響によって、低血糖になることもあります。
だからこそ、体調が悪い時の薬の使い方や、医療機関に連絡するタイミングを、普段から主治医と確認しておくことが大切です。
インスリンを自己判断で中断しないこと、飲み薬については事前に確認したシックデイルールに従うことが大切です。対応に迷う時は、かかりつけの医療機関に相談してください。
嘔吐が続いて水分がとれない、強いだるさや意識の変化がある、血糖値が著しく高い状態が続く時などは、早めに医療機関へ連絡してください。
⑧ 明け方のホルモンの影響(暁現象)
明け方から早朝にかけて、成長ホルモンやコルチゾールなどの影響で、肝臓から血液中へブドウ糖が放出されます。
糖尿病がある場合、その変化をインスリンの働きで十分に補えず、朝の血糖値が高くなることがあります。これを「暁現象(あかつきげんしょう)」と呼びます。
「何も食べていないのに、朝の血糖値が高い」と驚く方もおられますが、食事以外にも、こうした体の仕組みが関わっているんですよね。
ただし、朝の高血糖がすべて暁現象とは限りません。夕食や夜間の血糖値、薬の効き方なども関わるため、朝の高い値が続く時は、記録を持って主治医に相談するとよいと思います。
血糖値を、自分の体を知る手がかりに
血糖値は、食事の内容だけでなく、食べ方・運動・睡眠・ストレス・体調など、いろいろな要因が重なって変動しています。今回の8つが、すべての理由というわけではありません。
高かった日に「何を食べたか」だけでなく、「よく眠れていたか」「いつもより忙しくなかったか」「体調はどうだったか」も振り返ってみると、変化の手がかりが見つかることがあります。
また、食前か食後か、食後どのくらい時間がたっているかによっても、数値の意味は変わります。同じ条件での記録を比べることも大切です。

血糖値は、頑張りに点数をつけるものではありません。高かった理由をひとつに決めつけず、食事や生活、体調を一緒に振り返りながら、その人に合う方法を考えていきたいです。
一度の数字だけで、自分を責めすぎずに。まずは自分の血糖値が動くパターンを知ることから、一緒に始めていきましょう。
高い値が続いたり、体調の変化があったりする時は、主治医への相談も大切にしてくださいね。
「どこに相談したらよいかわからない」
そんな時には、気軽にお声がけくださいね。
お話を伺いながら、少しでもお力になれたら嬉しいです。
荒木 まり
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参考資料
糖尿病情報センター「糖尿病とは」
糖尿病情報センター「シックデイ」
CDC「10 Surprising Things That Can Spike Your Blood Sugar」
米国糖尿病協会「High Morning Blood Glucose」
Shuklaら(2017)食べる順番と食後血糖に関する研究


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